チェス史 驚きの 7 大記録
記録はすべての人の求道心を刺激します。チェスの長い歴史の中で生まれた記録には何十年も破られていないものがあり、中には何世紀も破れないだろうというものもあります。
歴史に刻まれた記録の中から、特に驚くべきものを 7 つご紹介しましょう。
連勝: 世界チャンピオン、ボビー・フィッシャーの 20(19?)局
ボビー・フィッシャー、マスターレベルでの連勝世界記録保持者。|写真: Wikipedia
最終的にボリス・スパスキーとの選手権マッチに至る挑戦の過程で、ボビー・フィッシャーは各国のトップ選手を相手にみごとな 20 連勝を飾りました。連勝の始まりは 1970 年、パルマ・デ・マジョルカでの [世界選手権の予選] インターゾーン大会で、最後の 7 局を連勝しました。ただしオスカル・パノの棄権による不戦勝があったため、チェス史家の中にはこの 1 勝を数えない人もいます。
続く 1971 年に行なわれた挑戦者決定戦マッチで、フィッシャーはマルク・タイマノフとベント・ラルセンをそれぞれ 6-0 のスコアで完封します。次のチグラン・ペトロシャンとのマッチで第 1 局に勝った後、第 2 局に敗れて連勝が止まりました。
フィッシャーはその後、ペトロシャンとスパスキーの両者を大差で破り、世界チャンピオンになりました。
参考記録:
- 世界チャンピオン、ボビー・フィッシャー - 1963/4 年全米選手権で 11
戦全勝 - GM ファビアノ・カルアナ - 2014 年、シンクフィールド・カップで最初に 7 連勝 [最終成績は8.5/10]
連続無敗: 世界チャンピオン、ミハイル・タリの 95 局
ミハイル・タリ、マスターレベルでの連続無敗世界記録保持者。|写真: Wikipedia
ミハイル・タリは創意あふれる攻撃的な棋風で有名になり、それは 1960 年、ミハイル・ボトヴィニクとの世界選手権マッチで存分に発揮されました。彼はこのマッチに勝ち、23 歳で史上最年少世界チャンピオンとなりました。この記録も、1985 年にガルリ・カスパロフが 22 歳でアナトリー・カルポフを破って王座に就くまで破られませんでした。
タリの棋歴には健康上の問題がつきまとい、好不調の波が激しかったため、後年のすばらしい活躍を知らずにいる人もいます。彼は1973 年 10 月 23 日から 1974 年 10 月 16 日にかけて 95 局の間、負けを知らずに過ごしました。これに迫る人も出てこない、信じがたいほどの記録です。
参考記録:
- ミハイル ・ タリ(第2位も!) - 85 局(1972 年 7 月~1973 年 4 月)
- 世界チャンピオン、ホセ・ラウル・カパブランカ - 63 局(1916 年 2 月 10 日~1924 年 3 月 21 日)
世界チャンピオン最長在位: エマニュエル ・ ラスカー - 27 年
エマニュエル・ラスカー、在位期間最長の世界チャンピオン。|写真: Wikipedia
エマニュエル・ラスカーは 1894 年にヴィルヘルム・シュタイニッツを破って第 2 代の世界チャンピオンになりました。そして 1921 年にホセ・ラウル・カパブランカに敗れるまで王座を守りました。さらに 1930 年代までトップクラスの大会で好成績を収めました。ラスカーの在位期間が長いのは第一次世界大戦のためにルビンシュタインやカパブランカとのマッチが延期されたためだということがよく指摘されます。ただマッチのない時期があったことを考えても、ラスカーの在位期間は他のどのチャンピオンよりはるかに長いものです。
参考記録:
- 世界チャンピオン、ガルリ・カスパロフ - 15 年(1985 年~2000 年)
- 世界チャンピオン、ミハイル・ボトヴィニク - 13 年(1948 年~1963 年、3 度の在位期間の合計)
最高レイティング: 世界チャンピオン、マグヌス・カールセン - 2882
世界チャンピオンのマグヌス・カールセン、史上最高レイティング記録保持者。|写真: Maria Emelianova
マグヌス・カールセンは 2014 年 5 月の FIDE レーティングリストでこの記録をマークしました。非公式の [1局ごとに計算される] ライブ・レーティングでは、さらに高い 2889 を記録したことがあります。レーティングのインフレ現象があるため、この種の記録は無意味だと言う人もいます。ただ Chess.com の分析は、チェスの技術は時代とともに向上していることを示しています。
この記事公表の時点で、レーティングが 2800 に到達したことのある選手は 12 人しかいません。2900 近くまで行ったのはカールセンだけです。
参考記録:
- 世界チャンピオン、ガルリ・カスパロフ - 2851(1999 年 7 月)
- GM ファビアノ・カルアナ - 2844(2014 年 10 月)
史上最年少グランドマスター: GM セルゲイ・カリャキン – 12 歳 7 か月
GM セルゲイ・カリャキン、史上最年少グランドマスター。 |写真: Maria Emelianova
この記事が公表された時点では、カリャキンは 12 歳のうちにグランドマスターのタイトルを手にした唯一の選手です。カリャキンが初めて選手権マッチを経験したのは 12 歳になったばかりのころで、ルスラン・ポノマリョフがワシーリー・イヴァンチュクと FIDE 選手権マッチを戦った時、セコンド(補佐役)を務めました。
2016 年、カリャキンは自ら選手権マッチのチャンスをつかみ、マグナス・カールセンに挑戦しました。マッチは長いクラシカル持時間の対局が両者 1 勝ずつで 6-6 のタイに終わった後、早指しのタイブレークでカールセンの勝利に終わりました。
参考記録:
- 世界チャンピオン、ボビー・フィッシャー - 15 歳 6 か月 1 日(1958 年)
- GM ユディット・ポルガー - 15 歳 4 か月 28 日(1991 年)
最多同時対局数: GM エーサン・ガエム・マガミ - 604 局
GM エーサン・ガエム・マガミ、同時対局数の世界記録保持者。|写真: Wikipedia
「同時対局」とは多数の相手と一度に対局する方式を言います。盤を一列あるいは円形に並べ、マスターが各盤を順に回りながら、1 手指しては次の相手へと移っていきます。
9 回イランのチャンピオンになったことのあるエーサン・ガエム・マガミは、同時対局数の世界記録を作るために驚異的な数、604 人との対局を行ないました。場所はイランのテヘラン、結果は 580 勝 16 分 8 敗でした。会場はシャヒド・ベヘシュティ大学のスポーツ・スタジアム、 2011 年 2 月 8-9 日に行なわれたものです。
参考記録:
- スーザン・ポルガー - 326 人を相手に 309 勝 14 分 3 敗(2005 年)
- ホセ・ラウル・カパブランカ - 103 人を相手に 102 勝 1 分(1922 年)
最多目かくし同時対局: GM ティムール・ガレエフ - 48 局
ティムール・ガレエフ、目かくしチェスの世界記録保持者。|写真: Mike Klein
チェスの世界で特に驚かされる妙技のひとつは目かくし対局です。目かくし対局ではプレイヤーは盤を見ることができません。頭の中で局面を覚えておかねばならず、手は記号で伝えられます。さらに目かくし同時対局となるとプレイヤーは全対局の局面を同時に記憶する必要があり、チェスの技術と集中力を要する驚異の技です。
ティムール・ガレエフは 2016 年 12 月 3-4 日に 48 人と同時に対局し、この形式の世界新記録を樹立しました。結果は 35 勝 7 分 6 敗でした。このイベントについては Chess.com のレポートが詳しく伝えています。
参考記録:
- FM マルク・ラング - 46 局(2011 年)
- GM ミゲル・ナイドルフ - 45 局(1947 年)
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